研究概要 |
微小地震の震源継続時間は短いが,観測されるS波エンベロープの見かけ継続時間は不均質構造による散乱を強く反映して伝播距離の増加とともに長くなる.これまでの研究で,観測されたS波エンベロープ形状の解析から日本列島の火山フロントの背弧側では前弧側に比べて不均質性が強いことを指摘してきた.本申請研究では,この考え方を発展させ,S波の主要動のエンベロープに着目して初動から最大振幅の着信の遅れの計測を行い,その経路依存性,周波数依存性,伝播距離依存性から島弧の不均質の強さの地域性の研究を実施した.解析の数理的基礎を確立すべく,ランダム弾性媒質におけるベクトル弾性波のエンベロープの直接導出に取り組んだ.平成18年度に実施した研究を以下にまとめる. ・雑微動の相互相関関数のスタックから,日本全国に展開したHi-net観測点の間のレーリ一波伝達関数を抽出し,その群速度分布を求めることに成功した.また,雑微動の相互相関解析から媒質のグリーン関数を求める研究方法に関する紹介論文を執筆した. ・ガウス型スペクトルを持つ3次元ランダム弾性媒質における高周波数ベクトル弾性波のエンベロープを,マルコフ近似理論によって直接的に導出する数理論的研究を実施した.特に,平面波入射および点震源輻射の場合に定式化を完成した. ・IRISの観測点で記録された遠地地震のP波のトランスバース成分へのエネルギー分配比を不均質構造による散乱の寄与と解釈し,リソスフェアの不均質について世界規模での地域性を調べた.その結果,プレートの衝突帯や沈み込み帯では不均質が強く,大陸では小さいことを明らかにした.
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