研究概要 |
本研究の目的は、3次元地震波速度異方性構造を詳細に推定することである。本研究では、実体波及び表面波をともに含む広帯域波形そのものをデータとして用いる波形インバージョンを行うことにより、高精度かつ高解像度の3次元異方性構造モデルを推定する。特に実体波を用いた波形インバージョンは、世界的にも新しい課題であるため、本研究においては、手法の確立(ソフトウェアの実装)から始まり、3年間で、世界各地域のD"層およびマントル遷移層をターゲットとして、1次元構造推定を行い、地球科学的に興味深い結果を得ている。各地域におけるD"層の解析では、D"層における二重相転移仮説(Hernlund, et. al.,2005)を初めて直接的に支持する結果を得て(Kawai, et. al.,2007ab,小西ら、2007)、さらにその現象が局所的なものに留まらないことを示した。北西太平洋下の非常に局所的な地域ごとのSH波速度の深さ依存性における解析では、理論波形と観測波形の顕著な絶対振幅の違いに着目し、非弾性減衰パラメータに対するインバージョンにも取り組んだ。この過程で非弾性減衰パラメータに対する効率的な偏微分係数の計算方法を開発、ソフトウェアの実装を行い、日本の下では系統的に減衰が大きいという結論に至った(Fuji, et. al.,2007)。また、Takeuchi&Geller(2000,PEPI)の2次元有限差分法の最適演算スキームを用いて、2次元理論波形計算ソフトウェアの開発を行った。このソフトウェアは任意の不連続面を含む媒質に対して計算可能である。
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