研究課題
基盤研究(C)
水やメルトなどの流体相の存在が地殻や上部マントルのダイナミクスに与える影響を解明するためには、液相と共存する多結晶体の力学特性や輸送特性の解明が重要となる。静水圧下(静的)および差応力下(動的)での固液間のぬれ特性は、液相の存在形状への影響を通して、これらの特性に大きな影響を与える。本研究では特に未知の部分の多い動的ぬれ特性の解明を目指している。本年度はまずアナログ部分溶融試料(二成分共融系の有機物、静水圧下のぬれ特性と固相の変形メカニズムが部分溶融岩石と良く似ている)を一様な純粋せん断応力下で変形し、差応力下ではぬれ特性が異方的に変化することを超音波の横波によるその場観察と実験終了後の顕微鏡観察により実証した。最大圧縮軸方向に法線ベクトルを持つ粒界のぬれ特性には変化が無いが、最小圧縮軸方向に法線ベクトルを持つ粒界はぬれが促進され、粒界面積が減少することが分かった。また、このようなぬれ特性の変化が媒質のマクロな弾性と粘性に与える影響を定量的に測定し、コンティギュイティ(粒界面積とその異方性を表すテンソル量)と弾性、粘性を結びつけた既存の理論により説明できることを確認した。さらに、差応力の大きさを周期約100時間の正弦関数でゆっくり変動させる実験を行い、各差応力下ではぬれ特性が動的平衡状態に達することを突き止めた。これらの実験では一つの試料を主応力軸の向きを変えて何度も変形しているため、最終的には全て方向の粒界のぬれが促進される。そこで一つの試料を一方向のみに大変形できるよう実験装置の改良を行って変形実験を行い、差応力の向きを変化させない場合にはぬれ特性の変化が全ての方向には生じないことを確認した。別途、推進力の大きいプレスを利用した封圧下での一軸圧縮試験機の立ち上げを行った。
すべて 2005
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J.Geophys.Research-Solid Earth 110
ページ: doi:10.1029/2005JB003801
ページ: doi:10.1029/2004JB003544
地学雑誌 114・6
ページ: 901-920