研究概要 |
釜石沖の繰り返し地震のシミュレーションによる摩擦パラメターの推定:岩手県釜石沖では,M=4.7-4.9のプレート境界地震が平均5.5年間隔で繰り返し発生している.その周辺域には,M=2-3クラスの地震が発生するクラスターが3つ存在するが,その地震活動はM=4.7-4.9の地震サイクルの中で変動し,2つのクラスターについては地震サイクルの後半でのみ地震が発生する.プレート境界面の摩擦特性がすべり速度・状態依存摩擦法則に従うとした数値シミュレーションで,上のような特徴をもつ地震サイクルを再現することに成功した. 余震域拡大・余効すべりの数値シミュレーション:サイスミックカップリングが小さい領域のプレート境界型地震については,余震域はしばしば時間とともに拡大することが知られている.これは,本震の発生による余効すべりが伝播し,小さな固着域のせん断応力を増大せしめ余震を引き起こすためと考えられる.このような現象を説明するために,モデル断層面上に摩擦特性が速度弱化の大パッチと多数の小パッチを配置して数値シミュレーションを行った.余効すべりの伝播に伴う余震域の拡大が再現できたが,その拡大速度は本震のすべり速度や速度強化域の摩擦パラメターに依存することがわかった.この結果を用いれば,余震域の拡大速度から摩擦パラメターを推定することが可能になる.さらに,余効すべりの時間関数について調べた.1自由度のバネ-ブロックモデルについて理論的に得られているu(t)=u_0log(t/t_0+1)+V'tは現実的な3次元連続体モデルでの余効すべりについても成り立つことがわかった.ただし,余効すべりが上の式に従うのは摩擦がほぼ定常状態にあるときであり,定常状態に達するまでに過渡的な過程が存在する.過渡的な過程のすべり量は特徴的すべり量Lにほぼ一致するため,GPS観測から余効すべりの時間関数を精度良く決められれば,プレート境界面上のL値が推定できることがわかった.
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