大地震発生前の地震活動の異常については、これまで様々な研究が行われてきたにもかかわらず、現実には、これらを事前に検知するシステムが実用化されて役立っている例はない。本研究では、異常を検出するシステム、その基盤となる地震発生事前確率の推定、表示システムの3点について、検討した。第一の異常検出では背景活動に着目し、活発化等の異常を検出するシステムを開発した。地震活動の最も顕著な統計的性質は、時・空間的に集中することであり、その分布はOgata(1998)の提唱したETASモデルによって表現される。すなわち地震活動は、独立な背景活動と、統計的に独立でない活動(余震)とからなる。これまで行われてきた地震活動の解析では、この両者を分離せずに扱うことが多く、異常活動を見逃す、異常でない活動を異常と判断する、などの可能性が高い。本研究では、強度関数を用いた確率的分離を行い、客観性を担保した。人工地震カタログに対して同じ解析手法を用いたシミュレーションを行って比較し、SAIC(活動度の変化を考慮したモデルと活動度一定のモデルとのAICの差)が-8未満の静穏化、或いは10を超える活発化に注目すべきであるとの結論を得た。第二の事前確率の推定については、これまで提案されている8モデルについて、歴史地震活動との比較を行い、活断層データに基づく人工地震カタログの空間平滑化モデルが最も良い結果を与えることを示した。第三の表示法については、アニメーションを用いることとし、実際にb値の空間分布などのアニメーションを作成した。
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