平成17年度は、基本測定システムの設計開発と一連の予備実験を行った。測定システムは、1)CuBe製の小型圧力セル、2)圧力セル封入に適した小型電気炉、3)交流磁化率測定のためのコイルシステムとロックインアンプ、からなる。現段階では、電気炉加熱により、金属Ni試料の室温から約600°までの交流磁化率精密測定が可能となった。デジタルロックインアンプと交流ブリッジによる磁化率測定系は再現性も良好であり、Niのキュリー点を1℃以下の精度で測定できる。現在は比較的低周波(100kHz)で測定しているが、今後は測定系を改良することにより、交流磁化率の周波数特性(ロックインアンプの測定上限250kHzまで)を計測できるようにしたい。1)の小型圧力セルは、CuBe製のシリンダー(外径8.8mm、全長60mm)と非磁性タングステンカーバイド製ないしジルコニアセラミック(ZrO_2)製のピストン(外径3mm、全長10mm)で構成され、約1GPaを発生できることを確認した。この圧力セルによって加圧した試料を、圧力容器ごとMPMS(Magnetic Property Measurement System)で測定することにより、これまでに数種の人工単結晶試料の低温高圧下での磁性測定を行い、良好な結果を得ることができた。一方、自然岩石残留磁化の圧力変化の現場測定をするために、これよりやや大型の圧力セル(外径12mm、全長70mm)と従来型のSQUID磁力計を用いた測定システムを開発中である。これまでに、圧力セル各構成部品の磁性評価を行い、10^<-3>emu程度の磁化強度をもつ試料の圧力依存性を測定できる見通しがついた。平成18年度(最終年度)は、測定システムの完成度を高め、自然岩石試料や造岩磁性鉱物を用いた応用実験を行う予定である。
|