研究概要 |
本研究では、隕石衝突により生じた鉱物中の各種衝撃変成組織を,カソードルミネッセンス(CL)などの分光学的手法を含めた物性科学学的な方法によって衝撃変成を定量的に評価することを目指している。 ドイツRiesクレーター内から採取した石英試料について、典型的な衝撃変成組織であるPDFsを対象にCL及び顕微ラマン分光法を用い、高倍率・高分解能のCL画像観察ならびに二次元ラマン画像解析を行った。CL画像において石英のバルク発光中に直線上の微細な暗線が認められ、これは光学顕微鏡下で観察されたPDFs組織に対応できた。結晶構造が衝撃波により周期性をもって破壊され、この部分は発光中心が解消されたためCL発光せずに暗線となって現れている。これは、ラマンスペグトル分析においても結晶構造の破壊を確認することができた。また、二次元ラマン画像においても、PDFsに対応した構造の結晶性低下を示す縞状の組織を検出できた。さらに、石英のCL発光の温度依存性を検討した結果、衝撃を受けていない石英は2段の温度消光過程を示すのに対して、Riesクレーター内の衝撃を受けている石英はほぼ1つの過程で進行することが確かめられた。これら消光過程の活性化エネルギーの定量的な評価にも成功した。この成果を、昨年度はScienceに投稿したが、一般受けしないとの理由からアクセプトされなかった。現在は、Earth and Planetary Science Letters再投稿中である。 今年度は、主に宇宙航空研究開発機構において、2段式軽ガス銃により産地の異なるアルバイト、石英、カルサイト、粘土の衝撃実験をおこなった。その結果、衝撃によって、1.産地が異なってもアルバイトに500nm,300℃にプロードなピークが形成されることが分かった。2.石英は衝撃により、110℃付近に感度の増加が見られた。またESR側定では、衝突によってE_1',Ge,Al,Ti-Li中心のシグナルが消滅するのを観測した。3.カルサイトは熱ルミネッセンススペクトルの変化はみられなかった。4.粘土は衝撃によっても、近赤外反射スペクトルはほとんど変化しなかった。その結果の一部はESR応用計測研究会・ルミネッセンス年代測定研究会(奈良女子大、2008年3月)で報告した。
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