重力衛星GRACEからの重力場復元について手法開発の最終化を行い、2005年の観測データから月平均重力場を推定し、年平均モデルを作成した。得られた全球平均モデルを基盤に、北西太平洋域における陸・海上重力測淀データ、人工衛星アルチメトリーによる海域重力場モデルを最適統合する手法を開発し、得られた地域的な精密重力場モデルから当該域のジオイド、モデルを構築した。 GRACE観測からの重力場復元では、軌道制御や搭載加速度計の検定処理による品質情報などに基づくデータ選別を加え、改良されたエイリアシング対策を用いた手法を作成した。これを適用して求めた2005年の全球月平均重力場は、広域の重力時間変動を示す、安定した情報を提供することが分かった。一方、地域的重力異常場推定手法は解の安定性が不十分であり、日本周辺海域の海洋質量変動のエイリアシング対策のさらなる改良が必要である。つぎに、多種重力情報からの地域的精密モデル化では、二次元ウェーブレット解析・復元手法を用いた空間波長別の統合手法を開発した。それは、全球年平均場を基盤に、アルチメトリー・モデルを約1.25度から4度のバンドパス、陸・海上重力場モデルは約1.25度をカットオフとするバイパス処理をしたものを統合する処理に相当する。これらの設定は各データの品質に基づいて決定された。 得られたジオイド・モデルをGPS/水準法によるジオイド高データと比較し、離島等の験潮場における平均海面位とジオイド・モデルとの較差が、日本海、南西諸島や伊豆諸島域の海面力学高の違いを良く反映していることが明らかとなった。また、その較差が海洋観測による海洋力学高分布とよく一致し、得られたジオイド・モデルが海域で約10cmの精度を有しており、海洋の力学的研究の基準面として利用されると期待される。なお、研究成果は2007年開催のIUGG総会などで発表した。
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