研究概要 |
今年度は以下の2点について研究を進めた. 1.北太平洋亜熱帯モード水の再出現現象の時間依存性の研究 より長期の海面水温資料と亜表層水温資料を用いて,北太平洋の再出現現象を解析した.その結果,再出現は時間依存性を持つことがわかった.すなわち,約十年が再出現を起こすと,次の約十年は起こさない.さらにこの変動は,アリューシャン低気圧の消長に7-9年のラグを持って対応していることがわかった.この結果,北太平洋中央部の冬季の海面水温変動に,再出現現象が大きく関与していることになる.この結果は,Journal of Climateに印刷された. 2.東部亜熱帯モード水は再出現現象を持たない要因の解明 北太平洋東部亜熱帯モード水や北大西洋マデリアモード水は,再出現機構を持っていない.この理由を昨年度に続き,WHP高解像度海洋資料と,Argoフロート資料を用いてさらに検討した.その結果,この海域では,大規模海洋循環により,北から低温・低塩分の水がモード水下部にサブダクションするため,モード水下部ではソルトフィンガー型の混合が激しいこと,この海域の暖候期の海面熱フラックスは,他のモード水海域よりも小さく,夏季の薄い季節躍層が十分に亜表層のモード水を孤立させないことによることをより詳細に把握することができた.すなわち,東部亜熱帯モード水は,形成後変質が激しく,冬季の偏差を持続できないため,再出現機構を持たないのである.この結果は,Journal of Oceanographyに受理され,印刷中である.
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