研究概要 |
本課題の最終年度にあたる今年度は,次の項目について研究を行った。 1.北太平洋亜熱帯循環系北西部における貯熱量偏差の移動について 亜熱帯モード水が亜熱帯循環系のスピン・アップ/ダウンにともなって,遠隔再出現が起こったり,起こらなかったりすることを既に明らかにしている.そこで,その理由を,海洋表層貯熱量の変動によるものと考え,歴史的海洋資料により検証した.その結果,循環系のスピン・アップ(ダウン)にともない,北西部に正(負)の貯熱量偏差が出現し,時間の経過とともに,ゆっくりと中央部に移動していることが見出された.このような状況が,再出現現象発生の条件であることがわかった. 2.数十年スケール変動の仮説の提出 これまでの研究の総まとめとして,北太平洋の数十年スケール変動には再出現現象が大きな役割を担っているとの作業仮説を提出した.アリューシャン低気圧の強化にともなう冬季偏西風の強化,を出発点とすれば,亜熱帯循環系のスピン・アップ,北西部における正の貯熱量偏差の出現,その移動,再出現現象の発生,中央部における正の海面水温偏差の出現,アリューシャン低気圧の弱化というサイクルができる.本研究課題により,正の海面水温偏差からアリューシャン低気圧の弱化という最後の段階の因果関係を除き,このシナリオの証明はできたと考えている.
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