1.推定式の改善 全天日射量の推定式におけるこれまでの結果を統計数理研究所における「環境データ解析の方法と実際」にて公表し、統計的手法に関する取り扱いについて、評価と改善へ向けての助言を受けた。その成果については市野美夏(2007)に詳細に記した。本研究の結果は統計学的にも重要な課題を含んでいることが明らかとなり、特に、評価の難しかった日記の天気の揺らぎについての知見を得た。そこで、統計学的な側面からのアプローチも含めた公表の第1段階として、推定式作成用データの基礎統計量を「お茶の水地理47号」に詳細を記した(印刷中)。 2.推定に用いる歴史資料の収集とデジタル化 東京の歴史天候記録(石川日記)の明治以降のデータデジタル化により、解析データ期間、観測データとの重複期間が延長された。並びに、19世紀半ばの気象観測記録(霊験公募)の各観測時の天気記録から日別の天気を作成し、その分類、デジタル化が終了した。19年度に、データチェック、推定値の算出、及び日記天候記録との比較を行う。 3.全天日射量の推定 1896年からの日照時間を用いた全天日射量を推定した。その解析にて、東京における大気混濁度の100年間の変動を得られた。東京の大気汚染が注目された1960〜70年代についてはすでに詳細な研究があるが、1890年代から2000年という長期の大気混濁度の変動については議論されていない。この結果は、アジア域における大気混濁度の問題として、歴史時代に限らず様々な環境問題に繋がる重要な要素である。 4.周辺域 これらの結果と比較する東アジアの古環境に関するデータとして、モンゴルの雪害(ゾド)に関する18世紀以降のデータを入手、及び、中国の18世紀における天気記録の予備調査にて、中国の天気の日データについて、天気の記述方法、記録の残存状況、本研究で用いる推定方法への利用可能性を確認できた。
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