研究概要 |
本年度は,回転球殻内の外側安定成層内の流れに注目して,非常に薄い安定成層中の2次元的な流体運動をモデル化した回転する球面上の非圧縮2次元流体モデルを用いた減衰性乱流の研究を行った.スペクトル法を用いたモデルプログラムを用いてこれまでに取り扱われてきた研究よりも系の回転角速度を2桁ほど大きい値の場合まで扱い,回転が大きい極限での流れの漸近的な性質を見いだすことをめざした.全運動エネルギーが等しく位相の異なる25通りの初期状態からはじめて東西平均運動エネルギーの時間変化が落ち着くまでに十分に長く時間積分を行い,最終状態をアンサンブル平均した流れ場を解析した結果,生成される東西平均流に興味深い性質を見いだした.すなわち,極での西向き周極流と中低緯度での縞状構造が出現し,回転が大きくなるにつれてその幅がせまくなる傾向がとらえられた.回転の大きさによらず西向きの周極流が形成されることを説明するためにロスビー波の持つ作用の緯度方向フラックスを解析した.その結果,西向き運動量を持つロスビー波が赤道から極方向へ伝播し極域で吸着されることで西向き周極流が形成されることを確認できた.さらに,この周極流の幅と強さの回転角速度との関係がそれぞれ回転角速度の-1/4乗および1/4乗に比例することを発見し,このスケーリング則の理論的な裏づけを行うことに成功した.以上の成果を現在流体力学会英文誌Fluid Dynamic Reseachに投稿中である.
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