研究概要 |
昨年度までに,対流の安定成層内の流体運動への影響の問題に対して,下部領域の対流運動の影響を除いな安定成層領域だけを取り出してその流体力学的な性質を調べるべく数値実験と理論的考察を行って来た.本年度はこの結果を踏まえて,安定成層より下部の運動を取りこんだ,外側に安定成層を伴う回転する球殻内の熱対流の数値実験を行った.特に成層の安定度と対流の強さの指標となるレイリー数に注目して,その変化に対する依存性を調べた.熱拡散と粘性の比を表すプランドル数は渦粘性と熱拡散を意識して1,内外半径比は中心核の状況に近い0.4程度,回転の効果を表すエクマン数は1/1000に固定した.これまでの研究ではレイリー数を対流開始時の値である臨界値の4倍程度までしか扱っていない.一方で,安定成層を伴わない状況での回転球殻熱対流計算ではレイリー数が臨界値の百倍程度の計算例がある.本研究ではこれまでの結果に基づいてレイリー数を徐々にあげてレイリー数が臨界値の数倍から数十倍程度の場合を計算した. この系統だった数値実験の結果から以下の知見が新たに得られた.1、強い安定成層の存在は赤道逆行流の生成を助長する.安定成層のない通常の回転球殻対流の場合,臨界値の数十倍程度の範囲においてレイリー数によらず引き起こされる帯状流が赤道上端で順行流となることが知られている.しかし外層に強い成層安定度が存在するときには,レイリー数を臨界値の十倍程度に大きくすると,赤道上端での帯状流が逆行流となる.このとき深部の対流は規則的なテイフー柱状渦ではなく乱流的であるが依然として安定成層を浸食していない.2、安定成層の存在は対流運動を上端領域で禁止し対流領域の内外半径比を大きくするのに加えて,対流領域上端境界の力学条件として粘着条件と自由すべり条件の中間的な条件を与える効果を持つ. 以上の成果をPhysics of Fluidsに投稿準備中である.
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