研究概要 |
本年度は,上層安定成層を伴う回転球殻中の磁気対流の臨界状態を数値的に求め,磁場の影響を受けた柱状の対流運動の安定成層への貫入を考察した.特に磁場の強さの指標となるエルサッサー数に注目して,その変化に対する貫入の程度の依存性を調べた.外部から与える基本場の磁場は球殻の回転軸方向と平行な一様磁場を用いた.熱拡散,磁気拡散と粘性の比を表すプランドル数および磁気プランドル数は渦拡散過程を考慮して1に,内外半径比は地球中心核の状況に近い0.4,回転の効果を表すエクマン数は1/100000に固定した.基本場の磁場を次第に強くして臨界対流を計算していったところ,柱状対流が安定成層下へ補足されている状態から安定成層へ大きく貫入する状態へと遷移する傾向が見出された.状態が遷移する磁場の強さはエルサッサー数が1程度のところであった. このような傾向を理論的に解釈するために磁場のない場合を扱ったTakehiro and Lister (2001)と同じアプローチを試みたが,残念ながら安定成層内の磁気流体の慣性重力波の分散関係から貫入の程度の磁場依存性を説明することができなかった. 上記の数値実験に加えて回転球殻中の磁気流体ダイナモに対する上端境界条件の影響を調べた.その結果,上端を粘着条件から応力なし条件に変更すると,ダイナモ作用の維持が困難になる傾向が見出されたが,出現する磁場の構造は粘着条件の場合と大きな変化が見られなかった.
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