太平洋ゲートウェーのひとつであるインドネシア・シーウェー(インドネシア通過流)の縮小(約300万年前)に関する気候モデル実験データを解析した。その結果、インドネシア・シーウェーが狭まって西部熱帯太平洋海域に海洋性大陸が形成されたために、同海域での赤道湧昇が無くなり、同海域とその周辺海域で海面水温が上昇したことが分かった。この海面水温上昇にともなって積雲対流活動が活発化し、ウォーカー循環が強まった。ウォーカー循環の強化によって海上の貿易風(東風)が強まり、太平洋でラニーニャ的な応答が起こった。このラニーニャ的な応答にともなって、太平洋・北アメリカ域のテレコネクション的応答も起こり、北太平洋の北部から北西部の北アメリカ大陸西岸で寒冷化が起こった。 また、パナマ・ゲートウェーが開いている場合(約300万年前)と閉じている場合(現在)の気候モデル実験データを解析したところ、パナマ・ゲートウェーが閉じて現在のようなパナマ地峡が形成されたために、北太平洋で深い対流が止まり、塩分躍層が形成され、北太平洋とその周辺域が寒冷な気候に変わったことが見出された。 海洋堆積物コア解析による古気候・古海洋復元観測データから、これら太平洋ゲートウェーの変化が熱帯太平洋の水温躍層構造を変化させるとともに、高緯度海域の塩分躍層構造も変化させて、エルニーニョ南方振動やモンスーンに影響を与えている可能性があることが指摘されており、本研究の気候モデル実験データの解析結果と整合している。
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