パナマ・ゲートウェーが開いている場合には、北大西洋亜熱帯域で形成される高塩分水が太平洋に流入し、北太平洋の北部で深い対流が発生した。この深い対流に伴う活発な海洋熱塩循環によって黒潮の流量は増加し、北太平洋で海流が低緯度から高緯度に運ぶ熱量が増大した。また、熱帯太平洋域ではパナマ・ゲートウエーが開いている場合には、海流による熱輸送量が風系とともに変化し、恒常的にエルニーニョ状態(パーマネント・エルニーニョ)になることがわかった。これらのことは、温暖な気候は太平洋ゲートウェーの変化といった地形の変化によっても引き起こされ得ることを示唆している。 新生代において温暖な気候から寒冷な気候に遷移してきたが、この間チベット高原の上昇もアジアモンスーンを活発にし、東アジアの大河川の流量を増加させ、北太平洋縁辺海の塩分低下にともなう寒冷化を促進したのではないかということが示された。海面塩分は、チベットヒマラヤが隆起するに従って、東アジア縁辺海において年平均値が低下し、振幅が増大することが分かった。南シナ海では、山岳上昇による河川水流入量(主にレッド・メコン川)と降水量-蒸発量(海上の梅雨前線)の両方の増加が海面塩分の低下を引き起こしている。東シナ海と黄海では山岳上昇による河川水流入量(主に長江と黄河)の増加が海面塩分の低下を引き起こしている。日本海では、河川水流入量と降水量-蒸発量の両方の増加が海面塩分の低下を引き起こしていることが示唆された。また、チベット高原等の山岳上昇はエルニーニョ南方振動の周期を短くし、振幅を小さくするということも見出された。
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