太平洋ゲートウェーのひとつであるインドネシア・シーウェーが狭まって海洋性大陸が形成されたために、同海域での赤道湧昇が無くなり、海面水温が上昇したことが気候モデル実験データの解析から分かった。この海面水温上昇にともなって積雲対流活動が活発化しウォーカー循環が強まり、太平洋でラニーニャ的な応答が起こった。また、パナマ・ゲートウェーが開いている場合(約300万年前)と閉じている場合(現在)の気候モデル実験データを解析したところ、パナマ・ゲートウェーが閉じて現在のようなパナマ地峡が形成されたために、北太平洋で深い対流が止まり、塩分躍層が形成され、北太平洋とその周辺域が寒冷な気候に変わったことが示唆された。 チベット高原上昇実験データの解析から、チベット高原上昇にともなってアジアモンスーンが活発になり、東アジアの大河川の流量が増加し、東アジア縁辺海の塩分は年平均値が低下し、振幅が増大することが分かった。このような東アジア縁辺海における年平均塩分値の低下をともなって、新生代にはヒマラヤチベット隆起による寒冷化が促進されたのではないかということが推測された。さらに、チベット高原等の山岳上昇はエルニーニョ南方振動の周期を短くし、振幅を小さくするということも見出された。 海洋堆積物コア解析による古気候・古海洋復元観測データから、これら太平洋ゲートウェーの変化や山岳上昇が熱帯太平洋の水温躍層構造を変化させるとともに、高緯度海域の塩分躍層構造も変化させて、エルニーニョ南方振動やモンスーンに影響を与えている可能性があることが指摘されており、本研究の気候モデル実験データの解析結果と調和的である。
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