研究課題
基盤研究(C)
本研究では、太陽活動と電離圏の対応を観測的に明らかにしようとした。これらは、(1)太陽フレアX線データの整備と、EUV観測データの取得(2)太陽フレアの観測的性質に関する研究(3)EUVデータ解析手法の確立とデータ解析(4)(1)とGPSデータを用いた、フレアによる大気中の電子数の増加に関する観測的研究に大きくわけられる。(1)は「ようこう」の観測データを主として作成し、世界の太陽研究者に初めて画像と時間変動を含めた太陽フレアX線データを約10年分提供することを可能にした。(2)については(1)を使って、太陽フレアを統計的に解析し、ほとんど観測例がない太陽X線放射源の密度の高さ依存性を数百km単位で明らかにした。(3)EUV観測データは時間と波長帯が限られるので、不足分を補うため数値シミュレーションを用いて時間的に連続な擬似データ作成を試み、数倍程度の範囲内で観測データと一致させることを可能にした。また、EUVデータ、F10.7、TSI(Total Solar Irradiance)、X線データの相互の関係を調べ、F10.7はEUVとは相関が良いが、TSIの代用とするには問題があるとの結果を得た。(4)太陽フレア発生時での太陽天頂角、フレア強度、全電子数の増加を統計的に調べ、EUV放射強度と全電子数の増加が一次の比例関係であることを明らかにした。また、GPSデータから得られる全電子数の増加はEUV波長域の変化に良く対応し、GPSデータに影響を及ぼす層はF層であるとの確信を得た。さらに、夏半球と冬半球で電離圏電子数の変動を調べ、フレアによるエネルギー注入以外に、背景となる大気の状態が影響を与えることを明らかにした。
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