太陽出発時から惑星間空間に至るまで追跡が可能なCME(コロナルマスイジェクション)は、太陽風速度の発展を考える上で大きな役割を果たす現象である。中でも、太陽表面のプロミネンス消失等で発生するロープ状にねじれた磁場構造は、惑星間空間に放出された場合、フラックスロープと呼ばれる3次元的な構造を持ったマグネティッククラウドとして観測される。近年、軸がトーラス状のフラックスロープモデルが用いられるようになってきたが、パラメタの自由度が増えているため、1点観測でのフィッティングの妥当性を検討する必要があった。本研究では、1999年4月16-17日にACE衛星および火星探査機「のぞみ」の2つの探査機による観測から、トーラス型磁気ロープモデルの妥当性を調べた。この日の現象は、ACE衛星のみの観測によればトーラス南端を探査機が通過したものと解釈されていたが、今回のフィッティングの結果は、探査機がトーラスの北端を通過したと考えた方が、下端を観測したと考えるよりも観測とよく合うことを示していた。やや北よりに位置していた「のぞみ」がトーラス中心軸より外側の部分、南寄りだったACEがトーラスの内側寄りの部分を通過する形となったため、両者で磁場東西成分が逆向きであったことが説明できるようになった。また観測時間も2つの探査機による観測時刻をほぼ再現できた。探査機がトーラス北端を通過したと言うことは、トーラス中心は黄道面より南側にあったことになる。この磁気ロープの発生元と考えられている4月13日のフィラメント消失は北半球の現象であった。このような現象は太陽風と太陽面現象の対応付けに重要な情報を与えてくれるものである。
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