研究概要 |
木星からのデカメートル波帯における自然電波放射である木星電波は1955年に発見されて以来、様々な観測が行われ、その強力な電波放射がプラズマレーザ機構によるものであることが少しずつではあるが明らかとなってきた。 この木星電波放射機構を解明するためには、木星電波放射源の空間的な情報を得ることが最も重要なポイントとなる。しかしながら、この電波源の空間的な情報を得るための地球上からの観測は、地球の電離層の電子密度のゆらぎによる大きな制約があり、アメリカの観測所で1970年代に行われてきた木星電波VLBI観測でも、極めて難しい状況であった。筆者は、木星デカメートル波電波源の空間的な情報を高精度に得られる「モジュレーションレーン法」という新しいリモートセンシングの手段を開拓した。[Imai et al.,1992,1997,2002]本研究は、この研究成果をもとに2年間の研究期間の間に、世界初の試みとなる次世代インターネットのネットワーク回線を使った新しい木星電波VLBIシステムを開発し、モジュレーションレーン法による観測と同時にVLBI観測することにより、今まで到達できなかった木星電波源の超微細構造を明らかにすることを目的とするものである。このVLBI(Very Long Baseline Interferometer)では、空間的に離れた場所におかれた複数の木星電波受信システムの出力信号を干渉させることにより木星電波源の空間的な情報を超高分解能(600kmの基線で、5秒角)で得ることが可能となるもので、高知高専と鹿島宇宙通信研究センターの間を次世代インターネットである超高速ネットワーク(JGNII)により接続した新しいVLBIシステムの構築を行った。また、実際の木星電波VLBI観測も行い、IP-VLBIボードによる4MHz・8bitサンプリング(32Mbps)とGPSにより同期した原子時計による時刻同期システムの検証も行った。
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