研究概要 |
伊豆諸島の9世紀の噴火を明らかにするために平成17年度は, 1.平安時代の文書記録である,日本後紀,続日本後紀,日本文徳天皇実録,日本三代実録等から伊豆諸島の噴火の記述と噴火にともなう神階の昇授に関する記述を抜粋,再検討して,野外の噴火堆積物と比較した.その結果,新島において,868年向山噴火のほか856〜857年頃に玄武岩質の久田巻噴火-デイサイト質阿土山溶岩ドーム形成があったことがほぼ確実になった.この結果を2005年地球惑星関連学会合同大会で報告し,論文投稿準備中である. 2.八丈島で『八丈実記』の記述をもとに噴火で遷座されたとされる神社の調査および8世紀頃の火の潟遺跡を火山学的な視点から野外調査を行なった.八丈島西山火山の噴火年代を推定する炭化木および土壌試料の14C年代4個を測定した.八丈島に残されていた江戸時代成立の『園翁交語』を地元南海タイムス社の協力により入手してデジタル文書化を行なった.この作業により史料中には江戸時代の八丈島の噴火で住戸の移動があったことが記されていることを確認した.現在,出版にむけ準備を進めている.八丈西山過去1万年間のマグマの変遷についてまとめ,中部地殻および浅部地殻でマグマが分化したことを明らかにし,日本火山学会2005年秋季大会で報告した. 3.三宅島火山地質図が印刷された.これには,9世紀三宅火山噴火により噴出された溶岩の分布および山腹割れ目火口の位置が示されている. 4.伊豆大島の側噴火の噴出年代,火口位置と組成の関連を調べた.その結果,分化の進んだマグマは浅い溜りで生成し,山頂に近い割れ目から噴出する特徴を明らかにし,日本火山学会2005年秋季大会で報告した.現在投稿準備中である 5.江戸時代1815年頃に測量された伊豆諸島の伊能図を入手した,今後,歴史時代の噴出物による地形変化について検討する予定である.
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