研究概要 |
平成18年度は 1.2005年度に引き続き,平安時代の伊豆諸島の噴火の文字記録と野外の噴火堆積物と対比作業を進めた.新たに青ヶ島および利島に渡島して予察的調査を行なった. 2.八丈島火の潟遺跡の再調査と試料採取を行ない,遺跡を覆う泥流堆積物中の炭化木片の14C年代測定を行なった.測定結果は,従来遺物から推定されていた8〜9世紀よりも若い940±40yBPとなり,必ずしも整合的ではない結果が得られた.現在,明快な解釈を与えられない状態である. 3.伊豆大島の噴火記録の再検討,現地調査,神津島・新島起源のテフラの化学分析を行なった.その結果,新島886年噴火に由来する向山テフラが大島火山N1部層上部から発見された.N3部層のほか新たにN1,N2部層も9世紀の噴出物であることが確定した.これは定説を改訂する成果である.この結果を日本火山学会2006年秋季大会で報告した.また上記1.とまとめて,雑誌「火山」に発表した. 4.伊豆大島火山の噴火記録と伊能特別大図との検討から,1552年噴火による溶岩の分布の確認をした.また,地形上の特徴を再検討して新たな火口地形を提案し,防災上の意義を強調した.この結果も日本火山学会2006年秋季大会で(2.とは別の表題で)報告した. 5.9世紀の文献調査を中部地方,東北地方にまで広げた.その結果,新潟焼山,鳥海山の噴火を再確認した.そのほかこの時代におこった地震を総括すると,東北地方西岸-越後平野-長野盆地西縁-糸魚川静岡構造線(中部および北部)-南海トラフに大きな地震が集中していることが新たにわかった.東北日本と西南日本の境界および伊豆弧で集中して起こった噴火・地震は9世紀の顕著な東西短縮の表現であろう.この結果を2007年5月の地球惑星科学連合大会と11月のCities on volcano島原大会で発表する予定である.
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