研究概要 |
平成17年度〜平成19年度にわたり,「伊豆弧北部9世紀の火山・地震活動の活発化」を再検討し,その結果をもとに伊豆弧北部および広域的な周辺地域における9世紀頃のテクトニクスの特異性を解明すること,を目的とした研究を行った. 伊豆弧北部では9世紀に神津島・新島・三宅島・大島でこれまで指摘された噴火はすべて実際に起こっており,かつ規模の大きな噴火であったことを確認した.当時富士山も極めて活動的であり,また関東内陸でも地震が頻発したことを確認した.さらに文献で範囲を広げて検討したところ,伊豆弧を含む太平洋プレート-フィリピン海プレート境界および,アムールプレート-オホーツクプレート境界にそって,9世紀に噴火と断層活動が連鎖し,東北日本と西南日本境界沿いに東西短縮が起こったことが,ほぼ間違いないことがわかった. 20世紀後半以降,東北〜中部日本の日本海側で地震活動が活発であり,9世紀の活動と似た状況にある.一方,糸魚川静岡構造線活断層中部地区,富士川河口断層帯では地震の平均再来間隔を過ぎているという考えもあり,上記の部分で地震活動の連鎖が起こることを否定できない.この延長上には東海地震の震源域と想定されている南海トラフの駿河湾部分もある.富士川断層帯を震源域に含むような大地震が発生すると富士山の山体崩壊とそれに引き続き噴火が起こる,という最悪のシナリオも考え得るので,一層詳しい検討が望まれる. これらの結果および,関連する研究を,地球惑星関連学会連合大会,日本火山学会,日本第四紀学会,第5回火山都市国際会議(島原市)で17件発表した.論文として,雑誌「火山」などに計5編が掲載された.継続して行なってきた三宅島火山の調査の成果が火山地質図として出版された.
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