砂泥質変成岩は一般にSiO_2に過飽和な岩石である。そのため、SiO_2は過剰成分として扱われ、相平衡解析において石英の増減は無視されてしまっている。しかし、花崗岩質メルトが原岩から離脱するプロセスを議論する場合には、SiO_2の離脱、すなわち石英の産状やシリカ飽和度の変化についても検討する必要がある。本研究は、岩石の組織観察にカソードルミネッセンス検出器(CL検出器)を導入し、変成作用・部分融解・メトル離脱のタイミングを、岩石組織の解析に基づいて正確に決定することを目的とした。 本研究は、特に日高変成帯において革新的な成果をもたらした。それはグラニュライト・ミグマタイトの・トーナル岩のジルコンのコアは、原岩の堆積物の融け残り粒子であり、CL画像で高輝度に見えるリムの部分こそが、部分融解〜結晶作用に伴い形成された部分である事を見いだした事が契機となった。そしてそのリムの絶対年代が明らかになった事により、従来広く支持されてきた日高変成帯形成プロセスが、大幅に革新されることとなった。それらは以下のようにまとめられる。 日高変成帯の主要な熱イベントは従来言われていた55Maではなく、37Maと19Maの2回の熱イベントがあった。37Maは島弧的な火成活動で、おもに中〜上部地殻の火成岩類が相当している。19Maは背弧海盆の拡大に伴う火成活動で、MORB的組成の火成活動と、グラニュライト相に至る高度変成作用の時期がこれにあたる。 これらについてはGeologyに掲載され、新潟日報や北海道新聞にも本研究による成果が掲載された。これらの革新的成果は、本研究費で導入したCL検出器が無くては得られなかったものである。
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