研究概要 |
新潟平野の沖積層は,約8000年前に初期のバリアーが全体的に形成されるが,北東部の阿賀野川流域ではその後,デルタシステムが前進していくことがわかっている.また,約4700年前に福島県只見川中流域の沼沢火山では火砕流噴火があり,火砕流が只見川を一時的に堰き止めこの決壊が只見川・阿賀野川を約100kmにわたり破局的洪水流として流下したことが明らかになっている.この破局的洪水が平野にもたらす膨大な火砕物は,阿賀野川流域の平野のデルタシステムの急激な前進だけでなく,全体のバリアー列の発達と前進にも影響を与えたことが予測される.今回の検討は,大規模なイベント性の堆積作用が平野の形成に与える影響を見積もることを目的とした. 新潟平野の阿賀野川流域において複数のボーリングを掘削し,堆積相や年代などを検討した結果,以下の事項が明らかとなった. (1)沼沢火山を起源とする破局的洪水は,約100kmにわたり流下し,当時の海岸線まで到達したあと,洪水起源のデルタの形成ならびに河口の沖合いに相当する浅海域全体の堆積速度を速めた. (2)デルタシステムは破局的洪水とその後の供給量の増加に伴って,10kmあまりを約2500年間で前進した. (3)火砕物の再堆積の影響は,沖積層を形成する浅海域において約2500年間も継続される. (4)沼沢火山による洪水イベントは砂丘列の前進(形態の異なる列にシフト)をもたらしたこと.
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