研究概要 |
浅間火山2004年の活動のうち,9月1日と9月23日のブルカニアン噴火は比較的大きなものであった.この3週間のマグマの上昇・結晶化過程を全岩化学組成,造岩鉱物組成,マイクロライトの粒径分布,ガラスの含水量などから明らかにした.活動の経緯:新たなマグマ柱が,火口直下の既存安山岩体の中に上昇し,9月1日には,ブルカニアン噴火を起こした.この噴火によって帽岩の破片に加え,本質物であるパン皮状軽石を少量もたらした.軽石のガラスの含水量は,0.4-0.8wt.%であった.帽岩がなくなってマグマは上昇しその上部は火口内に溶岩ドームを形成,次のマグマの帽岩となった.9月23日のブルカニアン噴火で,石質岩片と少量の本質スコリア(含水量0.1wt.%)を放出した.9月1日の軽石と9月23日のスコリアを比べた結果,火道内における結晶化過程が明らかになった.軽石とスコリアの双方のマイクロライトに見られる結晶粒径分布から2つの段階が識別できた.まず,マグマがマグマ溜を離れて上昇時に核形成速度が増加していく.次に,火道のより浅所において多数のマイクロライトが高い過冷却度の条件下で結晶化した.軽石とスコリア両者のマイクロライトのCSDパターンは類似するので,マグマ上昇過程は両者共通していた.しかしながら,結晶度は軽石がスコリアよりも高いことは,後者がより深部にあり高温であったことを示す.ひとたび帽岩を吹き飛ばしたマグマが次のブルカニアン噴火を準備する過程を明らかにすることができたので,今後,ブルカニアン噴火が継続する場合において,上記の過程を噴火シナリオとして活用できる可能性がある.
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