今年度は、四国東部の美馬市南部〜神山町にかけての三波川変成帯〜北部秩父帯、四国西部の西予市宇和町北西部の秩父累帯の地質調査を行った。また、美馬市南部の三波川変成帯の泥質片岩に含まれるビトリナイトの反射率・光学的異方性の検討、神山町の三波川変成帯〜北部秩父帯における砕屑岩類の全岩化学組成、宇和町北西部の秩父累帯の砂岩や緑色岩の岩石学的・地球化学的検討も合わせ行い、以下の成果を得た。 1)神山町地域の三波川変成帯(緑泥石帯)は、御荷鉾緑色岩との境界から約1.2km北側の境にして、構造的な特徴、泥質片岩の組成的特徴から北部と南部に分けられる。北部に含まれる砂質片岩と泥質片岩は、四万十帯北帯のコニアシアン-カンパニアンの砂岩と泥岩にそれぞれ組成的に類似する。また、南部の泥質片岩は同北帯のアルビアン-前期コニアシアンの泥岩と組成的に類似する。これらの事実は、この地域の三波川変成帯(緑泥石帯)の原岩年代が大局的に南側に古くなることを示唆する。また、北部のタービダイト起源の砂質片岩は基本的に南上位を示す。 2)美馬市南部地域の三波川変成帯の泥質片岩に含まれるビトリナイトの最大反射率、中間反射率、最小反射率の近似値を求め、焼山寺アンチフォームから御荷鉾緑色岩との境界付近までの見かけの厚さと反射率の諸パラメータとの関連を検討した。その結果、構造的下位(北側)に向かって(最大反射率-最小反射率)/最大反射率が基本的に大きくなることが明らかになった。このことは、下位に向かってビトリナイトの光学的な異方性がより大きくなることを意味する。 3)愛媛県西予市宇和町北西部の秩父累帯は、構造的な下位から四万十帯北帯構成層、三宝山ユニット、斗賀野ユニットの順序で累重することが明らかになった。昨年度の成果も踏まえると、四国西部の大洲市周辺の秩父累帯には構造的最下部に四万十帯がかなり広く露出することになる。
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