研究概要 |
平成18年度は、北海道の第三系の岩礁海岸や硬質底に認められる穿孔性二枚貝化石とその生痕化石の分類学的検討を行い、さらに化石の産状や堆積相解析に基づいて、海進期における岩礁海岸の古環境変遷を解明することを主要な目的とした。また、このような検討を進めるにあたり、北海道各地の海岸で採集した穿孔性二枚貝の殻形態や貝殻・漂着礫の生物侵食を検討し、比較試料として活用した。 化石試料については、北部北海道羽幌町の第三系三毛別層から採集した多量の穿孔性二枚貝化石や生痕化石の分類学的検討及び古生態学的解析を行った。三毛別層から産出した穿孔性二枚貝化石は,形態学的特徴から、Platyodon nipponicaとPenitella kotakaeに同定された。前者はオオノガイ科に属する大型の二枚貝類で、北日本の第三系に特徴的な絶滅種である。本種がつくる生痕化石は、こん棒型の形態をなし、未記載の生痕種と考えられる。一方、後者はニオガイ科に属する中型の二枚貝類で、北日本の第三系に特徴的な絶滅種である。本種がつくる生痕化石は、フラスコ型の形態をなし、Gastrochaenolites turbinatusに同定され,Penitella属を特徴づける生痕化石であると判明した.これらの二枚貝化石および生痕化石は、本来の生息場所に埋積された現地性化石と判断した。今回発見されたPenitella-Platyodon群集は、岩礁海岸あるいはごく浅い硬質底を指示する。また、未記載生痕群集は瀕海の半固結泥底を、Gastrochaenolites生痕群集は軟質岩石底を、それぞれ指示する。このような硬質基質生痕相の特徴は,岩礁海岸における海進初期の特徴・非堆積期間の程度・古水深の見積もりに有効な古環境情報を提供する。
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