後期中新世は世界的に陸上環境の乾燥化が進んだ時代だが、長鼻類においても乾燥化への適応として、アフリカ、西ユーラシア、東ユーラシアでそれぞれ独自に長鼻類の各系統がgrazerへと特殊化したことが系統の再検討と咀爵機能の推定からわかった。アフリカで起源し進化した長鼻類でゾウ科はgrazerへと進化する傾向のある長鼻類であることは良く知られている。ゴンフォテリウム類の一種であるアナンクスもアフリカでは独自にgrazerへと特殊化し、ゾウ科と同等の咀嚼機能を異なった様式で実現していたことが咬耗面の研究から分かった。このことは同位体の研究からも支持され、前期鮮新世までの段階ではむしろアナンクスの方がよリgrazerとして優れていたことが示唆される。しかし、後期鮮新世以降はゾウ科がgrazerとしてより優位に立つようになったらしく、アナンクスは絶滅する。これはゾウ科で採用された顎の前後運動を伴った咀嚼様式の方がより、hearing edgeを増やす点で有利であったことを反映しているのがあろう。 東ユーラシアのおける変化はアフリカにおける推移と類似しているらしい。東南アジアと中国の長鼻類を比較するために、北京の古脊椎古人類研究所を訪問した結果、シノマストドンの臼歯の進化傾向が明かとなった。後期中新世末に東アジア〜東南アジアにかけて広く分布していた初期のシノマストドン類は臼歯の咬耗面の構造からbrowserと推定されるが、東南アジアに分布を限定するようになった後期のシノマストドンでは咬頭が複雑化し、grazerへと特殊化している。興味深いことに、鮮新世末〜前期更新世においいはシノマストドンが中国のいくつかの地域ではスデゴドンより優勢である。残念ながら、同位体の研究がされていないため、支持材料に乏しいが、これはアフリカにおれるアナンクストゾウ科の競合と類似しているのかもしれない。
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