研究概要 |
後期更新世における動植物相の変遷と旧石器文化の関係を解明するために,昨年度行った動物化石の年代測定結果とこれまで報告されているデータを総括し,約5万年前以降の日本列島における動物群の変遷を考察した.その結果,日本列島では西から渡来したナウマンゾウを含む動物群と北から渡来したマンモスゾウを含む動物群が見られ,この両者は気候の寒暖変化に伴って日本列島を南北に移動することを繰り返した様子が明かとなった.最終的にゾウや大型のシカ類が日本列島から消えたのは一部の地域を除き本州地域では約2万年前,北海道では約1.6万年前であったと思われる. マンモスゾウとナウマンゾウの両動物群が生息し,気候に対応して棲み分けたと考えられる北海道地域において,新たな花粉分析結果も加え当時の植生を復元した.その結果,古期マンモス生息時代には北海道はサハリンのKhoeとほぼ似たエゾマツを主とし,グイマツ,トドマツを交える亜寒帯針葉樹林(タイガ)が分布していたことが明らかとなった.また,ナウマンゾウの生息した3万年前は,野付湾岸と石狩湾岸で前後の時代に比べて,気候が緩和したことが認められ,新期マンモス生息時代は寒冷・乾燥気候下にグイマツとハイマツが優勢となり,野付湾茨散を除く北海道の各地で草原が発達したことが判明した. この気候変化に伴う動物群の入れ替りと旧石器遺跡の関係は,いまだ明瞭とはなっていない.しかしながら,今回の調査によって北海道中央部の8遺跡および南東部の17遺跡においてSpfa-1テフラやEn-aテフラとの関係位置づけることができ,旧石器遺跡における道具の様式の変化と気候や動植物との関係を考察する材料が整えられた.
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