研究概要 |
本研究は、蔵王火山の最新活動期について、噴火履歴とマグマ供給系の変遷を元に、マグマ噴火全容を解明し、今後の噴火活動を予測することを目的としている。 1.噴火史の精密化 野外観察と炭素14年代測定を組み合わせることによって、最新期の噴火時期をより正確に求めた。最新期には、駒草平(約34-11ka)、馬ノ背(約7.5-4.1ka)、五色岳(約2.0-0.4ka)の3活動期が認められ、各活動期には各々4,6,6回の噴火エピソードが含まれる。噴火様式はブルカノ式〜ストロンボリ式噴火に水が関与したものと推定され、駒草平活動期の噴火は他の活動期よりも規模が大きい。各噴火エピソードの噴出量の見積もりが完成し、それを元に噴出率を求めると、駒草平、馬ノ背活動期では約0.02km^3/kyであるのに対し、五色岳活動期では約0.07km^3/kyと増加していることが判明した。 2.噴出物の岩石学的解析 斑晶鉱物の化学分析により、最新期噴出物は何れも、玄武岩質と安山岩質の2種のマグマの混合によって形成されたことが明らかとなった。活動期毎に噴出物の全岩化学組成が大きく異なることは、大局的に見て各活動期に各々異なる種類の玄武岩質マグマが上昇したためと解釈される。馬ノ背および五色岳活動期では全岩SiO_2量の時間変化が認められていたが、今回新たに駒草平活動期で時間経過に従い全岩SiO_2量がやや低下する傾向が、また五色岳活動期の約800〜400年前に2回苦鉄質になる傾向が認められた。この傾向は混合端成分マグマの混合率の変化でおよそ説明可能である。来年度は、端成分マグマの温度-圧力条件などを基にマグマ供給系の変遷を明らかにする予定である。 3.同位体比分析 マグマの同源性を検討する有効な手段である。今年度は試料調整ラインの組上げと試験測定を行い良好なデータが得られた。来年度は対象試料の分析を本格的に行う予定である。
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