研究概要 |
本研究は、蔵王火山の最新活動期について、地表でのマグマ噴火史と地下のマグマ供給系を解明し、今後の噴火活動を予測することを目的とし以下の結果を得た。 1.噴火史 17年度にほぼ明らかにした蔵王火山最新活動期のマグマ噴火史を完成させた。最新期は、駒草平(約34-11ka)、馬ノ背(約7.5-4.1ka)、五色岳(約2.0-0.4ka)の3活動期に細分され、各活動期には各々4,6,6回の噴火エピソードが含まれる。噴火様式は水が関与したブルカノ式〜ストロンボリ式噴火と推定される。噴出率は、それ以前は約0.02km^3/kyより、五色岳活動期で増加(約0.07km^3/ky)している。 2.マグマ供給系 17年度に、最新期噴出物は何れも、玄武岩質と安山岩質の2種のマグマの混合により形成されたこと、少なくとも活動期毎に別の玄武岩質マグマが深部から上昇したことが明らかになった。玄武岩質及び安山岩質マグマの温度は950-1000℃及び1150-1200℃と推定され、活動期毎にやや異なる。噴火エピソード毎に異なる場合もある。また、Sr同位体比は、同一エピソードでは、安山岩質の方が玄武岩質マグマよりやや高い。さらに鉱物化学組成を詳しく検討した結果、浅部ではほとんどの場合似たプロセス、すなわち深部から上昇する玄武岩質マグマにより、半固結状態にある浅部安山岩質マグマ溜りが活性化され、両者が混合し噴火に至るというものが働いていることが明らかになった。 3.噴火予測 噴出率積算図から判断すると、五色岳活動期の噴火傾向が続くならば、マグマ噴火が起こる時期に入っている。その場合、深部からのマグマの上昇、及びそれに触発されて浅部安山岩質マグマが活性化されると予想される。この内の幾つかは地震観測網によって捉えられると考えられる。もうひとつの可能性として、蔵王火山が再びマグマ活動の休止期に入ったことも考えられる。
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