研究課題
基盤研究(C)
伊豆-小笠原弧衝突境界外縁には、通常稀な数cm大のクロム透輝石巨晶を含む玄武岩〜玄武岩質安山岩脈が特徴的に発達する。この巨晶はその組成からマグマ発生初期にマントル浅部〜モホ面付近で結晶化したと考えられ、内部に多数の流体包有物・ガラス包有物を含む。本研究は、それら包有物の化学組成と水濃度を分析することで、衝突境界での流体発生とマグマ発生を考察することを目的とする。本年度は、当初の計画通り、丹沢山地東縁(16Ma)と富士川流域(8Ma相当)のクロム透輝石を含む玄武岩〜玄武岩質安山岩岩脈を調査し、そのガラス包有物の水素分析を行った。1)両地域のクロム透輝石は組成累帯が発達し、中心部のクロム透輝石の周囲に普通輝石組成のリムが取り巻く。これは、深部で形成された透輝石が別の玄武岩質マグマに捕獲・運搬されたことを示唆する。両試料の組成はほぼ同じだが、佐野川試料の方がややCr,Alに富む。ガラス包有物は薄茶色透明で直径20-50ミクロンの楕円形状で、中央部に多く含まれる。2)分析の結果、富士川試料のガラス包有物の水濃度は3.74±0.60wt.%H2O、丹沢試料の水濃度も4.04±0.40wt.%H2Oで、両者の水濃度は誤差範囲内で同じと考えられる。通常の玄武岩のガラス包有物の水濃度は1wt.%H2O以下、ボニナイトや典型的島弧のガラス包有物でも3wt.%H2O以下なので、今回の包有物の水濃度は高いといえる。これは、クロム透輝石を形成したマグマが水に富む環境で生じたことを示唆する。両試料を含む火山岩は背弧リフトに関係するので、今回の試料はマントル浅部に多量の水を供給するような背弧リフト環境で形成されたと考えられる。島弧同士の衝突境界では、衝突時に深部へ巻き込まれた堆積物からの水供給が期待できるので、今回の結果は衝突現象に関連した背弧への水供給の可能性を示している。
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