研究概要 |
K-NH4系雲母鉱物の層間イオン分布構造としては各雲母層でKとNH4が均質に混じりあう連続固溶体モデルが当初想定され,その後Drits et al.(1997)はKとNH4がそれぞれ別々にK雲母層とNH4雲母層を形成することによる混合層構造モデルの可能性を指摘した。Dritsらが行った不規則混合層構造のシュミレーション結果によれば,一部のX線底面反射がブロード化する特徴,具体的にはFWHH(005)/FWHH(002)の半値全幅比を測定評価することで混合層構造の判別が可能になる。本研究ではさらに不規則混合層以外の異なる混合層構造として規則型混合層構造と分離型混合層の場合にもシュミレーション計算を拡張し,X線底面反射の半値全幅比変化として評価される特徴を詳しく比較検討した。 1.不規則混合層モデルでは層間NH4比が大きくなると半値全幅比が緩やかに増大して中間組成(K/NH4=5/5)で極大となり,さらに層間NH4比が大きくなるとほぼ対称的に減少する凸カーブとなる。 2.これに対して規則型混合モデルの場合には底面反射のブロード化が約半分程度に弱められ,しかも半値全幅比の極大が2つの組成領域(K/NH4=25/75と75/25)に分離移動して現れる。 3.一方分離型混合層では逆に底面反射のブロード化が強められ,半値全幅比は最大値組成域(K/MH4=5/5)付近で不規則混合層の約3倍程度にも異常に大きくなって対称的な鋭い凸カーブ変化となる。 4.なお半値全幅比には混合層構造以外に試料の結晶度(結晶子サイズ)も著しく影響するので,シュミレーション結果を実際の試料に応用するには結晶度の影響を正当に評価する必要がある。 5.以上の判別基準に従って日本のロウ石鉱床に産するK-MH4系雲母鉱物10試料について層間イオン分布構造について解析検討したところ,不規則混合層よりも規則型混合層に近い結果が得られた。 6.次年度に向けては金属鉱床変質帯に産するK-NH4系雲母鉱物についても詳しい検討を続行する予定である。
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