研究概要 |
H18年度の成果 1)玄武岩のSr-Nd-Pb同位体比の測定を重点的に行った。西フィリピン海盆北西部では,沖縄-ルソン断裂帯(OLFZ)をはさんで,その東西で岩石の化学組成に違いが認められた。すなわち,OLFZ東部の岩石は,N-MORB〜E-MORBをへて海洋島玄武岩に類似した多様な組成を有しており,その起源マントルとして,N-MORBタイプのマントルとマントル・プルームのような,より深部に由来すると考えられるマントル(EM2とHIMU成分)の両方の関与が考えられる。したがって,同地域に発達するUrdaneta海台や重複拡大系は,活動的なマントル上昇流の影響を強く受けたことが示唆される。一方,OLFZ西部の岩石はN-MORB的であり,プルーム成分の関与は認められない。N-MORBタイブのマントルは,四国海盆やマリアナトラフなどの若い背弧海盆で指摘されているインド洋MORBタイプのマントルである。 (2)Hf同位体比のデータを得るための予備実験(カラム分離方法とTIMSでの測定技術の開発)も行った。 Hfの分離については,従来よりも簡便な方法を開発することができた。 (3)KRO3-04調査航海で得られた玄武岩について,変質に強い性質を有するAr/Ar年代測定を行い,32〜40Maの信頼できる年代値を得た。この年代値は西フィリピン海盆北西部の拡大時期を示している。従来,地磁気異常パターンから推定されている同地域の拡大年代は約40〜50Maであり,本研究での年代値とは明らかに異なる。すなわち同海盆の拡大史モデルの大幅な修正が必要である。 H19年度の研究予定 (1)本科研費の最終年度であることから,得られた成果を学術諭文としてまとめる作業と学会等における発表を中心とした活動を行う。また最終報告書の作成も行う。 (2)Hfの同位体比の分析技術の改良と実際のデータを得る。
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