研究概要 |
H19年度の成果 (1)西フィリピン海盆の火山岩類については,これまでSr-Nd-Pb同位体比のデータが多数報告されているが,Hf同位体比については分析が困難なこともあり,ほとんどデータがない状態であった。そこで,Hf同位体比データを得るための分析方法の確立を目的として,予備実験(カラム分離方法とTIMSでの測定技術の開発)を行った。そして,Hfの分離については従来よりも簡便な方法を開発することができた。しかし,TIMSでの測定は高精度測定に必要なイオン強度が得られず,改良の余地が残されている。 (2)前年度までに得られた岩石の化学分析(微量元素成分分析、Sr-Nd-Pb同位体比分析)のとりまとめとその時空間的組成変化の解明を行った。結果は西フィリピン海盆の北西部においては,沖縄-ルソン断裂帯(OLFZ)をはさんで,その東西で岩石の化学組成に違いが認められた。すなわち,OLFZ東部の岩石は,N-MORB〜E-MORBをへて海洋島玄武岩に類似した多様な組成を有しており,その起源マントルとして,N-MORBタイプのマントルとマントル・プルームのような,より深部に由来すると考えられるマントル(EM2とHIMU成分)の両方の関与が考えられる。したがって,同地域に発達するUrdaneta海台や重複拡大系は,活動的なマントル上昇流の影響を強く受けたことが示唆される。一方,OLFZ西部の岩石はN-MORB的であり,プルーム成分の関与は認められない。ただし,N-MORBタイプのマントルは,Pb同位体組成の特徴から,四国海盆やマリアナトラフなどの若い背弧海盆でも指摘されているインド洋MORBタイプのマントルである。 (3)本科研費の最終年度であることから,得られた成果を学術論文としてまとめる作業と学会等における発表を中心とした活動を行った。
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