研究概要 |
顕微鏡観察を行った岩石薄片上の小さな単結晶粒をX線回折法で調べることを目的とした。平成17年度には、市販の4-circle回折計に新たに製作したコリメーターを装着して、X線をサークルの不動点に集中させることに成功した。平成18年度は、かって光学性を記載したブラジル、ポッソスデカルダス産のK-マグネシオアルベゾン閃石(Tokonami et al.,Journal of Mineralogical and Petrological Sciences,99,pp59-66,2004)の薄片試料の結晶学的データを収集した。 微小な単結晶粒が拾い出せる場合には、あらゆる方向の入射線と回折線とを計測することにより、物質に固有な結晶学的データを収集し解析できることは周知である。しかし、岩石薄片上には他の結晶が共存するので、それらからの情報が解析を妨害する。そこで、当該結晶のみに探針の白色X線を当てることの出来るコリメーターを作った。これは内径が約0.2mmφのガラス細管中にX線を通すもので、出射側の位置の微調整により、回折計の本体を動かすことなくφ-circleの不動点に置いた微小結晶に入射線を集中するものである。 薄片上の試料の回折データの収集には背面反射だけしか使えないという幾何学的な難点があるので、分光機能のあるX線検出器(SSD)を用いることとした。X線回折計の駆動とX線検出器の出力の記録は、理学電機ジャーナル25巻1号3-9頁(1994)所収の論文にしたがって行った。逆空間内の観測範囲は試料表面の垂線を中心とする半頂角10.5°の円錐の内部で、これを15938に分割して測定した。その中の1540点で有意の回折強度が見つかった。単結晶の回折実験としては強度を有する点の割合が異常に大きいが、これは試料結晶がスライドガラスに貼り付けられる際に、著しい応力変形が生じた為と考えられる。
|