研究概要 |
スラブ融解メルトとマントルかんらん岩の反応について理解を深めることを目的として,スラブ融解に関連すると考えられる高温の沈み込みがあった場所の火成岩の研究と,高温高圧実験による研究を行なった.そして以下のような成果があった. (1)マントル最上部に相当する1GPaの条件下でカンラン石とデイサイト質メルトとの反応実験を行なった.そして実験生成物の微量元素組成をレーザーアブレーションICP質量分析計(L、A・ICP・MS)を用いて測定した.50μm径を超える斜方輝石および単斜輝石を成長させることに成功し,斜方輝石および単斜輝石とデイサイト質メルト間の分配係数をおよそ25元素について決定した.斜方輝石については,軽希土類をはじめとする液相濃集元素の珪長質メルトに対する分配係数が苦鉄質メルトより大きいという従来指摘されていた組成依存性に反して,苦鉄質メルトと差がない分配係数を得た. (2)高温の四国海盆の沈み込みに関連した,西南日本弧の海溝寄り地域の中新世火成岩について研究を行なった.ザクロ石が安定な高圧下での融解により形成された珪長質火成岩が広域的に分布することを見出すとともに,海溝に近接した場所での大量のS-type花こう岩質マグマの成因について議論した. (3)南米アンデス弧の中でも,Chile Riseの沈み込む場所に近接する,Southern Volcanic Zoneの第四紀フロント火山の全岩化学組成の島弧伸長方向の変化傾向について研究を行い,火山弧下のスラブ年齢が古くなるにつれて,沈み込む堆積物由来成分のマグマソースへの寄与が大きくなることを明らかにした. (4)ジルコンをはじめとする鉱物のレーザーアブレーションICP質量分析法による微小領域分析について鉱物間の分配係数の決定や年代測定法について成果があった.
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