研究概要 |
本年度から、水蒸気や含水鉱物中に含まれる数mgオーダーの水分子の酸素同位体比を正確かつ精密に測定するための装置を製作している。 25℃での水溶液-水蒸気間おける水分子の水素同位体分別に関しては、アルカリ土類金属および二価遷移金属(Co, Ni, Cu)の塩化物についての情報を得た。これらの水溶液と平衡に存在する水蒸気(水素ガス)の水素同位体比は、その水溶液の濃度の増加とともに高くなった。この二価金属イオンの塩化物の水素同位体効果は、一価のアルカリ金属塩化物よりも大きな値を示した。一方、塩化コバルトおよび塩化ニッケルの結晶水和物を過飽和溶液より平衡下で晶出させ、含水鉱物-飽和溶液間の水分子の水素同位体分別に関する情報を得た。結晶水に取り込まれた水分子の水素同位体比は飽和溶液よりも低い値を示した。25℃で晶出させた塩化コバルトと塩化ニッケルの六水塩の水素同位体分別係数は実験誤差の範囲内で一致した。この両者の結晶構造は同一なので、結晶水への水素同位体分別は、中心金属の違いよりもむしろ結晶構造が大きく寄与することが明らかになった。また、結晶水の数が少なくなるほどその水素同位体分別は大きくなった。以上の結果と他の研究者の結果より、水和錯体は、相対的に重水素が枯渇し重酸素が濃縮していると推定できた。 また、端成分であるH_2^<18>O水を用いて、その過飽和溶液よりCuCl_2 2H_2^<18>Oの結晶水和物を晶出させ、そのラマンスペクトルを測定した。得られた振動数より換算分配関数比を計算し、塩化銅二水和物-水蒸気間の水分子の酸素同位体分別係数を理論的に求めている。
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