研究概要 |
本研究は、水晶振動子共振周波数の浸漬角度依存性という現象を解明することを目的としている。そのために、インピーダンスアナライザーを用いて、ニュートン流体、電解質溶液中で水晶振動子の浸漬角度を変化させ、その時の水晶振動子共振周波数特性を系統的に測定し、非電解質と電解質という異なる性質の溶液での特性を検討した。具体的には、ニュートン流体としては、非電解物質のスクロース溶液を用いた。電解質溶液では、1価の電解質(LiCl, NaCl, KCl, NaNO_3, CH_3COONa)と2価の電解質(MgCl_2, Na_2SO_4, MgO_4, CaCl_2)を用い、イオン価、イオン種による水晶振動子共振周波数変化の違いに焦点をあてて検討を行った。そして、研究の結果下記のような成果を上げることができた。 1.非電解質であるニュートン流体では、水晶振動子の傾け方により共振周波数変化の浸漬角度依存性が現れる場合と現れない場合があることを明らかにした。っまり、水晶のX-Z面が重力方向と角度を持った時のみ水晶振動子共振周波数の浸漬角度依存性が現れることを発見し、この現象が重力方向と関係が強いという結果を得た。 2.電解質溶液においては、1価、2価の両電解質溶液において水晶振動子共振周波数変化が浸漬角度依存性及び直線性を示すことを明らかにした。さらに、非電解質物質とは異なり、共振周波数変化に切片が現れ、この切片の値は陽イオンのみに依存し、陰イオンには依存しないことを発見した。また、溶液の誘電率、導電率は水晶振動子共振周波数変化にまったく影響を与えないことを明らかにした。 このように、非電解質、電解質において水晶振動子共振周波数が浸漬角度依存性を示し、重力と関係あることを示唆する結果を得ることができ、固相-液相界面に存在する分子・イオンは熱運動に対し重力の影響を無視できないであろう可能性を示す結果を得た。
|