当該研究では、オリゴ核酸を用いた電子付着切断機構の検証、天然DNAの電子付着切断の評価、および電子付着によるDNAの配列選択切断法の開発を目的としている。 平成17年度は、低速電子源の検討、試料の作成・キャラクタリゼーションを実施した。 1.低速電子付着源の検討 試験的低速電子源として、金属板を用いた光電子源の代わりに、高周波電界放出電子源・およびマイクロ波誘起電子放出源を検討した。高周波電界放出電子源は市販の小型マイナスイオン源を利用し、減圧下で電子放出を確認した。マイクロ波誘起電子放出については、アルミナ膜テンプレート・電解めっきを利用してNiナノロッドを作成し、マイクロ波オーブン内大気圧下で電子放出を確認した。これらの電子源を用いてDNA切断実験を行う予定である。 2.試料固定・キャラクタリゼーション技術の確立 DNAを自己組織化膜(SAM)上に固定した試料を作成し、顕微鏡観察によるキャラクタリゼーションを行なった。SAMは、金蒸着ガラス基板にアミノアルカンチオール、ガラス基板にアミノシラン、Niナノロッドにアミノヘキサン酸を固定させて作成した。蛍光顕微鏡を用いて、これらすべてのSAM上で、単一DNAが固定されていることを確認した。電気泳動より迅速に直接的にDNA切断をキャラクタリゼーションする方法として、光学マッピングを検討した。20kbp以上の長鎖DNAについては、伸張固定されていることを確認した。DNA配列選択切断法の開発のために、DNAインターカレーターで表面修飾した銀微粒子とDNAの結合の試験も行った。
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