研究概要 |
インスリンの熱によるアミロイド繊維形成反応は時間に対して、シグモイド曲線を与え、温度および保持時間により、さまざまなアミロイド線維が形成される。そこで、インスリン水溶液を60℃で温置時間を変化させて形成されたアミロイド線維の二次構造に及ぼす圧力効果をアミロイド線維の平行βシート構造に由来するアミドI/I'バンドから追跡した。その結果、温置時間0.3時間、1時間、3時間のアミロイド線維は、200MPaの加圧により、平行βシート構造に由来するピークは消失した。そこで、平行βシート構造由来のアミドI/I'バンドの吸光度変化の圧力依存性からインスリンアミロイド線維の解離に伴う体積変化は温置時間によらず、いずれも約-85ml/molの大きな負の値を得た。一方、温置時間6,12,72時間のアミロイド線維は1GPaの加圧に対しても、その線維構造は安定に存在した。これらの結果から、長い時間温置して十分に成熟させたアミロイド線維の平行βシート構造は密に充填されていて、圧力に対して可逆的なエラステイック変形を示すが、温置時間の短い未成熟のアミロイド繊維ではその構造中に多くのボイドが不規則に存在し、このボイドが加圧により壊れることにより大きな負の体積変化を示すことを明らかにした。
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