希ガスクラスターを効率よく作成するためにクラスター発生装置を作成した。このクラスター発生装置を、電子・イオン同時3次元運動量計測装置に取り付け、サイズを選択したクラスターの脱励起過程を調べた。 Arダイマーを生成し、Ar2p電子をイオン化し、アルゴンダイマーの内殻2p軌道にホールを生成させる。この後に、放出される電子のエネルギーと生成イオンペアとの同時計測を行い、サイズを選択した、光電子分光の測定に成功した。Ar^+イオンおよびAr^<++>イオンと同時計測した光電子のエネルギー測定により、内殻ホール生成後に起きる電子間クーロン脱励起過程(ICD)の観測に初めて成功した。ICD過程とは、励起種が、余剰エネルギーを近くに存在する原子等に移動させ、その原子等の外殻電子を効率よく放出させることができる過程を言う。また、Arトライマーから生成する3つのAr^+イオンと同時に電子のエネルギーを計測し、Arトライマーにおいても、ICDが生じていることを見出した。 一方、Arダイマーからは2つのAr^+イオンも生成される。オージェ電子との2つのAr^+イオンとの同時計測を行った。この結果、原子内のL23M23M23オージェ過程の後に2つのAr^+イオンが生成していることが判明した。このことより、オージェ過程によって一方のAr原子に生成した2つのホールのうちの一方が、他方のAr原子に移動し、そのときに光を放出して脱励起していることがわかった。
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