研究概要 |
平成18年度基盤研究Cの研究期間中に得た成果を以下にまとめると、 1 アルケンの高周期元素類縁体(Si,Ge,Sn)に関する新しい知見 2 テトラシラシクロブタジエンを配位子とする金属錯体の化学 3 シクロプロペンの高周期元素類縁体(cyclo-R_4E_3(E=Si,Ge,Sn)の合成と反応性の解明 4 高周期14元素を骨格にもつビシクロ[1.1.0]ブタン誘導体の特異な構造と反応性 上記4項目に特に進展があった。 1に関する特筆すべき成果は、安定なスズ-スズ二重結合化合物、ジスタンネンR_2Sn=SnR_2(R=SiMe^tBu_2)の合成であり、これは溶液中でも安定な二重結合を保っている初めての化合物である。 2のトピックスでは、[{η^4-(^tBu_2MeSi)_4Si_4}Fe(CO)_3]を合成し、その構造決定に成功した。さらに先行研究のある炭素類縁体,[(η^4-H_4C_4)Fe(CO)_3]との比較し、ケイ素配位子としての特徴を明らかにした。 3ではシクロプロペンの高周期元素類縁体R_4SiGe_2 and R_4Ge_3(R=SiMe^tBu_2)の効率的合成法を見いだし、精密な構造解析と詳細な化学反応性の検討を行った。その中でも塩化メチレンにより増炭反応および環拡大反応が進行したことは高周期元素不飽和結合であるがゆえの反応であり、特に詳しく研究を行った。 4のトピックスでは、高度に歪んだ骨格であるために構造化学的に興味のもたれていたビシクロ[1.1.0]ブタン誘導体、我々の今回の研究では骨格4原子がSi_3CとGeSi_2Cの化合物を合成し、その構造を明らかにした。以前よりビシクロ[1.1.0]ブタン誘導体はその原子価異性体との相対安定性に関して研究がなされていたが、今回、骨格を形成する元素の種類を変化させることで、以前の研究では見つかっていなかった異性化などの反応性が見つかり、高周期典型元素化学の最新の研究成果として発表した。
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