高周期14族元素からなる不飽和小員環化合物は、それ自身反応活性であり、その化学的性質の解明には興味がもたれる。本研究では特にシクロブタジエンジアニオンの高周期14族元素類縁体を合成し、その反応性および構造を明らかにした。 昨年度中に達成した特筆すべき成果としては、(1)シクロブテンの構造異性体であるビシクロ[1.1.0]ブタンの合成に成功した。構造解析の結果、極めて短いSi-Si結合を有することを明らかにした。この化合物は高い歪みエネルギーのため、容易に異性化し原子価異性体であるシクロブテンやシクロペンテン誘導体を与えることが分かった。(2)高周期14族元素からなるシクロブタジエンを配位子とした様々な遷移金属錯体を合成し、その構造および物理化学的手法による諸物性値の決定、また理論計算をもちいた電子構造の理論的考察を行った。(3)フェロセンのシクロペンタジエン配位子の一つを、ケイ素原子2つとゲルマニウム原子1つを含む高周期14族元素からなるシクロペンタジエン配位子で置き換えた新規なフェロセン誘導体の合成に初めて成功した。その特異な構造をX線結晶構造解析、NMR、サイクリックボルタンメトリーおよびDFT計算によって明らかにした。
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