研究概要 |
1.溶媒中における反応化学種の構造解明と面選択性予測理論の構築 α位にアルコキシ基を持つ鎖状ケトンを合成しLiAlH_4によるヒドリド還元を行ったところ,面選択予測の理論モデルとして従来用いられてきているFelkin-Anhモデルによって予測される選択性とは反対の結果が得られた.次に分子軌道計算によって得られた遷移状態構造について構造上の特徴および安定性を比較したところ,この系における求核付加反応では,基質上の二つの酸素がリチウムにキレーションすることで安定化された遷移状態を経由して反応が起きていることが示唆された.さらにこれらの遷移状態は,従来の遷移状態モデルで提唱されている構造とは異なることから,遷移状態安定化効果に基づいた面選択理論モデルは今回の系における面選択の理由を説明できないことが明らかとなった.また本反応の反応経路を分子軌道計算によって求め,得られた反応の初期構造についてカルボニル炭素周りの空間の広がり(PDAS)とLUMOの広がり(EFOE density)をそれぞれ求めたところ,反応初期の段階で既に面選択性要因が発生していることが示唆された. 2.タンパク質のフォールディング機構の解明を目指したタンパク分子内微弱相互作用の定量評価 二置換エテンにおけるシス効果はlone pairの非極在化によるものであることを明らかにし,タンパク質の配座決定因子としても重要な役割を果たしている可能性を見出した.またタンパク質データベース解析の足掛かりとして,近接原子間の距離依存性や方向依存性を統計的処理のためのプログラミングを行った.
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