研究課題
一重項ビラジカル性を有する化合物は一般には非常に反応活性であり、単離が困難である。私はフェナレニルの高いスピン非局在化能を活用することにより一重項ビラジカル種を安定に単離することに成功した。得られた化合物は、結晶中でvan der Waals接触を下回る距離でπ-π接触していた。偏光反射スペクトルを用いた低エネルギーバンドの帰属や分子軌道法を用いた電子構造の解明から、分子内と分子間に不対電子間の相互作用が働き、固体中で無限共役一次元鎖を形成している可能性が高いことを明らかにした。単分子を集積させるだけで共役が無限に広がる可能性を始めて明らかにした結果といえる。電気伝導度を測定したところ、室温で5x10^<-5>S cm^<-1>の電導度を示す半導体であり、単成分炭化水素としては最も電気を流す物質であることが分かった。一方、一重項ビラジカル性の新たな物性探索の一環として、非線形光学特性に注目した。一重項ビラジカルの電子構造は、結合が中途半端に切れた電子構造に等しく、強い電場下で大きな非線形光学応答を示す可能性があることが理論的に明らかにされている。そこで、一重項ビラジカル化合物の二光子吸収スペクトル(三次の非線形光学応答の一つ)を測定したところ、期待通り3000〜8000GM(GM=10^<-50>cm^4s photon^<-1>molecule^<-1>)という非常に大きな二光子吸収断面積を示した。ドナー・アクセプター置換基を有さない炭化水素としては最も大きな断面積を示し、一重項ビラジカル性が二光子吸収に優れた特性を与えることを明らかにした。
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Chemical Physics Letters 418巻(in press)
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