水素化インジウムを用いたラジカル的還元と環化反応への応用 我々の今までの研究においてインジウムヒドリドがラジカル試薬となることが明らかになった。インジウムヒドリドの反応性を見極めたという点では、安定金属前駆体としてスズヒドリドを用いることに価値はある。しかし使える(人に使ってもらう)試薬としてその地位を確立するためには決して、有害性、効率性といった点で万全であるとはいえない。したがって、より環境負荷の少ない合理的なインジウムヒドリドの発生方法を開発する必要があり、さらに触媒的に発生させることを検討した。ラジカル環化反応としてはハロアルケンやエンインを用いた。インジウムヒドリドを発生させるために安定金属前駆体(水素源)としてアルキルシラン、水素化カルシウム、水素化ナトリウムを検討した。これらの水素源は金属ヒドリドとしてはそれ自身で反応性がほとんど無く、安定で取り扱いやすいといった利点を持ち、汎用性の高いインジウムヒドリドの発生法となることが期待される。中でもインジウムアルコキシドとヒドロシランを用いた系がもっとも中性に近い系であり、酸に不安定な気質の環化を可能とした。本系はスズヒドリドしか実質上用いることのできないラジカル環化反応分野において、スズに変わりうる新たな実践的反応剤となりうる。
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