1.窒素や酸素を含む5員環構造をもつヘテロ環は、生物活性を示す多くの天然物に含まれており、重要な基本骨格である。本研究では、エテントリカルボン酸エステル誘導体1(以下「1」という。)とプロパルギル基質とのルイス酸触媒による反応でピロリジンおよびテトラヒドロフラン誘導体を効率的に得た。1とプロパルギルアミンを0.2等量のInBr3-Et_3Nと、80℃で加熱すると、良好な収率でメチレンピロリジン誘導体が得られた。 さらに、1とプロパルギルアルコールを、ZnBr2やInBr3の存在下、80℃で加熱すると、良好な収率でメチレンテトラヒドロフランを得た。また、1とγ-ケイ素置換プロパルギルアルコール2を、ZnBr2と、80℃または110℃で反応させると、Z-ケイ素置換環化物が選択的に得られた。 次に、γ-エステル置換プロパルギルアルコール3と1を、ZnBr2の存在下110℃の反応で、Z-置換環化物が81-98%の収率で得られた。ZnCl2、ZnI2、InCl3、FeCl3、AlCl3でも、Z-体が主生成物として得られた。一方、SnCl4存在下において室温で反応を行うと、E-体が49-75%の収率で主生成物として得られた。立体選択性のルイス酸依存性は、ルイス酸金属のアルキンおよびカルボニル酸素への配位し易さの違いによると考えられる。 2.フリーデルクラフツ反応は、C-C結合形成のひとつとして重要な反応である。多様な置換基をもつエテントリカルボン酸誘導体とインドールの触媒的エナンチオ選択的フリーデルクラフツ/マイケル付加反応を行った。キラルビスオキサゾリン銅触媒(10mol%)を用いて付加体が高収率、95% eeまでの不斉収率で得られた。絶対配置をX線構造解析で決定した。高いエナンチオ選択性は、インドールの軌道相互作用による立体選択的な接近が原因であると考察した。
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