研究概要 |
複核アート錯体の前駆体となる[(ジメシチルボリル)フェニル]ジメチルヒドロシラン(1)およびフルオロシラン(2)を合成し,その構造および反応性を明らかにした。 (1)ヒドロシラン1とフッ化物イオンとの反応では,ケイ素原子上の水素原子がフッ素原子によって置換され,脱離したヒドリドがホウ素原子によって捕捉された化合物が得られた。これは,求核置換反応においてケイ素原子上の水素原子が,オルト位のホウ素原子によって求電子的に活性化されていることを示した興味深い結果である。 (2)また,ヒドロシラン1に対してアルコール類を作用させると,脱水素縮合反応が進行することを見出した。ヒドロシラン1に対して少過剰のメタノールをTHF中,室温で作用させると,水素の発生を伴って速やかに反応が進行し,対応するメトキシシランがほぼ定量的に生成した。2級および3級アルコールとの反応においても同様に対応するアルコキシシランが良好な収率で得られた。生成物はいずれもアセトニトリルで再沈殿させることにより白色固体として得られ,ヘキサンから再結晶することにより無色の結晶として単離することができた。ヒドロシラン1とジエチルアミンとの反応においても同様の脱水素縮合反応が進行し,対応するアミノシランが生成した。 (3)フルオロシラン2とフッ化物イオンとの反応では,フルオロボレートが生成したが,フッ素原子はケイ素原子とも弱く相互作用していることが明らかとなった。
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